建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事を除いて、建設業法に基づく建設業の許可を受ける必要があります。
建設業の許可を受けるためには、次に掲げる5つの許可要件を備えていること及び欠格要件に該当しないことが必要です。
①経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの
②専任技術者
③誠実性
④財産的基礎
⑤営業所
⑥欠格要件等
ここでは、わかりにくい建設業許可を取得するための5つの許可要件と欠格要件のうち、「誠実性」「財産的基礎」「欠格要件等」についてわかりやすく説明していきたいと思います。
誠実性について
当該法人、その役員等、個人事業主、支配人、支店長、営業所長が、請負契約に関し、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者ではないことが必要です。このような行為をするおそれが明らかである者は、建設業を営むことはできません。
※不正な行為とは、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等の法律に違反する行為をいいます。
※不誠実な行為とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいいます。
財産的基礎について
建設業を営むためには、資材の購入、労働者の確保、機材の購入、工事着工の準備資金等を必要とするため、財産的基礎(金銭的信用)を有していることが要件となっています。この判断は、許可申請時の直前の決算期における財務諸表によるものとし、営業開始の後、決算期が未到来の場合には、法人にあっては創業時の財務諸表によるものとしています。
一般建設業許可の財産的基礎の要件
次のいずれかに該当することが必要です。
①自己資本の額が500万円以上であること。
個人事業主の場合の「自己資本」は、期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。ちょっとややこしい。
法人の場合の「自己資本」は、貸借対照表における純資産合計の額をいいます。
②500万円以上の資金を調達する能力を有すること。
「500万円以上の資金を調達する能力」とは、担保とすべき不動産を有していること等により、500万円以上の資金について取引金融機関の残高証明書又は融資証明書等を得られることをいいます。
③許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること。
更新手続きの際にも財産的基礎要件を満たす必要がありますが、更新手続きを行う前の過去5年間に許可業者として営業を継続してきた場合には、この③の適用により財産的基礎を満たしていることになります。
特定建設業許可の財産的基礎の要件
次のすべての要件に該当することが必要です。
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
個人事業主の場合の「欠損の額」は、事業主損失が事業主借勘定の額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額をいいます。これもややこしいです。「資本金」は、期首資本金をいいます。「欠損の額」/「資本金」の割合が20%以下でなければなりません。
法人の場合の「欠損の額」は、貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合に、その額が資本剰余金、利益準備金及びその他の利益剰余金の合計額を上回る額をいいます。「資本金」は、株式会社の振込資本金や持分会社等の出資金額をいいます。割合に関しては個人の場合と同様に考えれば大丈夫です。
②流動比率が75%以上であること。
「流動比率」とは、流動資産合計を流動負債合計で割ったときの割合で、この割合が75%以上であることが必要です。
③資本金の額が2,000 万円以上であること。
個人事業主と法人によっての「資本金」の考え方は、前述した通りです。
④自己資本の額が4,000 万円以上であること。
個人事業主と法人によっての「自己資本」の考え方は、前述した通りです。
財産的基礎の要件は、常に満たしている必要はありません。財産的基礎要件は「許可申請」や「更新申請」「業種追加申請」のタイミングで直前の決算内容により確認されます。そのため、翌事業年度内に「許可申請」や「更新申請」「業種追加申請」を行う場合には、当期の決算内容で財産的基礎要件を満たしておく必要がありますので注意が必要です。
欠格要件等に該当しないこと
許可申請書またはその添付書類中に虚偽の記載があった場合や重要な事実に関する記載が欠けている場合には、許可を取得することはできません。また、許可申請者やその役員等若しくは令第3条に規定する使用人が次に掲げるものに1つでも該当する場合にも、許可を取得することはできません。
- 破産者で復権を得ないもの
- 第29条第1項第7号又は第8号に該当することにより一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 第29条第1項第7号又は第8号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分があった日又は処分をしないことの決定があった日までの間に第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から5年を経過しないもの
- 前号に規定する期間内に第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出があった場合において、前号の通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等若しくは政令で定める使用人であった者又は当該届出に係る個人の政令で定める使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
- 第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
- 許可を受けようとする建設業について第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- この法律、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第32条の3第7項及び第32条の11第1項の規定を除く。)に違反したことにより、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の3、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(⑭において「暴力団員等」という。)
- 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号(法人でその役員等のうちに①から④まで又は⑥から⑩までのいずれかに該当する者のあるものにかかる部分に限る)のいずれかに該当するもの
- 法人でその役員等又は政令で定める使用人のうちに、①から④まで又は⑥から⑩までのいずれかに該当する者(②に該当する者についてはその者が第29条第1項の規定により許可を取り消される以前から、③又は④に該当する者についてはその者が第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、⑥に該当する者についてはその者が第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該法人の役員等又は政令で定める使用人であった者を除く。)のあるもの
- 個人で政令で定める使用人のうちに、①から④まで又は⑥から⑩までのいずれかに該当する者(②に該当する者についてはその者が第29条第1項の規定により許可を取り消される以前から、③又は④に該当する者についてはその者が第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、⑥に該当する者についてはその者が第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該個人の政令で定める使用人であった者を除く。)のあるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者